初夏の風が通り始めるころ、街のようすが少しずつ変わってきます。気温や日差しが変わると、ふだん何気なく使っている電車やバスの中の空気も、どこか違って感じられるようになります。
公共交通機関は、移動の手段であると同時に、多くの人が一緒に過ごす「共有の空間」でもあります。だからこそ、小さな気づかいや思いやりが、その場の心地よさにつながります。目には見えなくても、ひとつの行動が周囲の空気を変えることもあるのです。
この機会に、乗り物の中での「やさしさのマナー」について、あらためて考えてみませんか。
静けさがつくる、安心できる空間

音への気づかいが、空間をやわらげる
公共の場では、音の大きさが思っている以上に周囲に響きます。スマートフォンの通知音や通話、にぎやかな会話のほかに、バッグを置くときの音や傘をたたむときの動作音なども、気づかぬうちに気になることがあります。ちょっとした気づかいで、全体の空気が落ち着いたものになります。
音漏れや通知音にも注意を
電車やバスでは、音が響きやすくなります。イヤホンからの音漏れや動画の再生音、スマートフォンの操作音なども、気づかないうちに周囲の静けさを壊してしまうことがあります。通知音を消しておいたり、音量を控えたりといった小さな気づかいが、快適な空間を保つ助けになります。
会話の声も少し控えめに
誰かと話していると、つい声が大きくなってしまうことがあります。とくに朝や夕方など、疲れている人が多い時間帯には、静けさが思いやりにつながることもあります。声のトーンを少し落とすだけでも、落ち着いた雰囲気が保たれます。
動きの中にもやさしさを

乗り降りや移動のときに
座席を立つときや、通路を通るときに、まわりの人のことを少し気にかけるだけで、スムーズで心地よい移動ができます。また、降りる人がいるときには、そっと体を引いて通路をあける――そんなさりげない動作にも、思いやりがにじみます。まわりへの配慮があると、混雑した車内でも落ち着いて過ごせます。動作のひとつひとつに、思いやりをそっと添えることが、快適な空間づくりにつながっていきます。
みんなで使うからこそ、自然な心づかいを

公共の乗り物は、みんなのもの
電車やバスは、自分ひとりの場所ではなく、さまざまな人が共に過ごす場です。「みんなで使っている」という意識があれば、自然と譲り合いの気持ちが生まれます。
優先席は、やさしさを分かち合う場所
優先席は「譲らなければならない場所」ではなく、「支え合うための空間」です。譲る人も譲られる人も、おだやかな気持ちでやりとりができたら素敵です。
見えない事情を思いやる気持ち

外からは分からないこともある
元気そうに見えても、実は体調がよくない方や、事情を抱えている方もいます。そうしたことに思いをめぐらせることが、やさしい行動につながります。
自分に置きかえて考えてみる
「自分がその立場だったら」と思ってみると、行動に自然と変化が生まれるものです。マナーは堅苦しい決まりごとではなく、気持ちを表す手段のひとつです。
香りやにおいにも心づかいを

香りにも思いやりを
乗り物の中は、多くの人と空間を分かち合う場所です。香水や整髪料、柔軟剤の香り、食べ物の匂いなどは、意外と気になってしまうものです。とくに密閉された空間では、苦手なにおいを避けるのが難しくなります。さらに、体調がすぐれないときには、ふだん気にならない香りにも敏感になることがあります。香りの強さを控えめにすることも、公共空間での礼儀のひとつです。
周囲の人へのまなざしを大切に

子ども連れや旅行者への配慮
ベビーカーを押している方や、言葉に不慣れな外国からの旅行者など、不自由を感じている方にさりげなく手を差しのべることは、その場の空気をやさしく変えるきっかけになります。
高齢の方などにも目を配って
座席をゆずる、足元に気を配る、乗り降りのときに少しだけ手助けする。そんな日々のちょっとした行動が、温かい空気をつくり出します。
一人ひとりの行動が、快適な空間をつくる

荷物の置き方にも思いやりを
肩掛けバッグを肩からおろす、リュックを背中から外して体の前に抱える、荷物を座席に置かない。そんなちょっとした気づかいが、限られた空間を快適に保つ助けになります。
マナーは“ここちよさ”の目安
ルールやマナーという言葉に堅さを感じる方もいるかもしれませんが、本来は、みんなが気持ちよく過ごすための目安です。「やさしさの目印」として受けとれば、心もすっと軽くなります。
きょうからできる、さりげない思いやり
混雑した車内でバッグを前に抱える、音を控える、降りるときにはゆっくり動く。どれも特別なことではありません。気づいたときに少し意識するだけで、電車やバスの中がより快適な空間になります。




コメント