変わる社会と年金制度〜これからの暮らしを考えるヒント〜

年金制度に対する不安が高まるなか、今後の暮らしをどのように支えていけばよいのか、多くの人が立ち止まって考える時代になっています。少子高齢化や働き方の変化など、社会が大きく変わる今、自分らしい備え方を見つけることがますます大切になっています。

老後の生活を支える基本構造

日本の年金制度は、3つの段階に分かれた「3階建て」と呼ばれる仕組みになっています。これは、公的な制度と私的な備えを組み合わせることで、老後の生活を支える構造です。

• 1階部分：国民年金（基礎年金）
20歳から60歳未満のすべての人が加入する公的年金です。主に自営業者や学生、無職の人が対象で、納付期間に応じた金額が支給されます。

• 2階部分：厚生年金
会社員や公務員が加入する年金制度で、国民年金に上乗せする形です。給与に応じた保険料を会社と本人で折半し、受け取る年金額も比例して決まります。

• 3階部分：私的年金（企業年金・個人年金）
企業が用意する年金制度や、自分で加入する個人年金などが含まれます。老後の生活をより豊かにするために、自主的に備える部分です。

少子高齢化と年金財政の不安

以前は、現役世代数人で1人の高齢者を支えていました。しかし最近では、1人の高齢者を1～2人で支える時代に入り、年金制度のバランスが崩れつつあります。

この構造の変化から、次のような課題が浮かび上がっています。

• 年金制度の財政に対する不安
• 支給額が物価に追いつかず、実質的な減少（インフレによる目減り）
• 支給開始年齢の引き上げや制度改正の可能性

年金の受給開始は原則65歳ですが、60歳から75歳の間で自由に選べます。早くもらえば金額は減り、遅く受け取れば増えるという仕組みになっており、自分の働き方や健康状態に応じた選択が求められます。

iDeCoや企業年金の活用がカギ

老後の経済的不安を軽減するには、公的年金だけに頼るのではなく、私的年金や資産形成も組み合わせることが大切です。

• iDeCo（個人型確定拠出年金）
自分で掛金を拠出し、自分で運用。税制優遇もあり、老後資金づくりの代表的な制度です。

• 企業型確定拠出年金（企業型DC）
企業が従業員のために掛金を拠出するタイプで、従業員が自分で運用先を選びます。

• 確定給付企業年金（DB）
将来の年金額があらかじめ決まっており、運用リスクは企業が負担します。

また、「つみたてNISA」も非課税で資産を増やせる制度として注目されています。これは年金とは別制度ですが、老後資金づくりに活用できます。目的や運用方法の違いを理解し、うまく組み合わせることが大切です。

働き続けられる体をつくる

人生100年時代と言われるようになり、定年後も働き続ける人が増えています。収入面だけでなく、生きがいや社会とのつながりの面でも、健康でいることは重要です。

バランスのよい食事、適度な運動、睡眠の見直しなど、今の生活習慣を整えることが、将来の安心につながります。

公的年金だけでは足りない現実

夫婦2人で必要とされる老後の生活費は、月22万〜28万円ほどと言われています。一方で、平均的な年金受給額は月20万円前後。毎月数万円の不足が出ることは珍しくありません。
この差額をどう埋めていくかが、これからの課題です。

• 貯蓄を早くから習慣づける
• 積極的な資産運用を学ぶ
• 働けるうちは副収入を確保する

無理なく継続できる方法を見つけて備えることが、将来の自信につながります。

頼るのではなく、自分で組み立てる

年金制度は今後も変化していくと予想されます。だからこそ、自分の人生に合わせた備えを意識的に作ることが必要です。

• 制度の仕組みや最新情報を把握する
• 年金は「もらうもの」ではなく「使いこなすもの」として考える
• 私的年金や投資、貯蓄を組み合わせて多角的に備える
• 健康と仕事への意欲を保ち、無理のない範囲で働き続ける

ライフプランの見直しや、家計簿をつけるといった日々の工夫も立派な備えです。

最近では、厚生労働省の「年金シミュレーター」を使えば、自分の将来の年金額を簡単に確認することができます。現実的な数字を見てから逆算することで、より的確な準備ができるようになるはずです。

年金への不安は誰しもあるものです。ですが、正しく知って、今できることを始めていけば、少しずつ不安は薄れていきます。

情報を集める、制度を学ぶ、小さくても行動を起こす——。その積み重ねが、いつか「備えてよかった」と思える未来につながるはずです。