気温と湿度が高くなる季節は、食中毒が増えやすい時期です。特に梅雨から夏にかけては、菌やウイルスの繁殖が活発になり、いつも通りの調理や保存では防げないこともあります。「気をつけていたつもりだったのに…」と後悔しないために、今の時期にこそ、食中毒対策の基本を見直しておきましょう。
食中毒が増えるのはどんな時期?

高温多湿は菌にとっての“快適環境”
食中毒の原因となる細菌は、温度が20℃以上、湿度が70%を超えると活発に増殖し始めます。特に30~37℃前後では菌の繁殖スピードが格段に上がり、放置された食品が数時間で危険な状態になることもあります。
梅雨どきから夏にかけては、ちょっとした油断が健康リスクに直結します。冷蔵庫に入れているから大丈夫、という思い込みにも注意が必要です。
よくある食中毒の原因とその対策

主な原因菌と特徴を知っておこう
食中毒の予防には、原因となる菌の特徴を知り、それに応じた対策を取ることが重要です。以下に、特に注意が必要な細菌とその対処法をご紹介します。
サルモネラ菌:加熱が不十分な卵や肉類に潜んでおり、感染すると発熱や下痢、腹痛などの症状を引き起こします。特に卵は殻に付着していることがあるため、生食を避けるか、よく加熱してから食べるようにしましょう。
カンピロバクター:鶏肉を中心とした家禽類(かきんるい)に多く見られ、ほんの少量の菌でも感染することがあります。この菌は熱に弱いため、中心部までしっかり火を通すことが感染予防の基本です。
腸炎ビブリオ:主に魚介類に付着している細菌です。特に海水中に多く存在し、海産物を調理する際は真水で洗うことで菌の数を減らすことができます。加熱することで確実に死滅しますので、生食を避けるか、調理前の衛生管理を徹底しましょう。
黄色ブドウ球菌:人の皮膚や手指、傷口などに存在しており、素手で握ったおにぎりやお惣菜などから食中毒が発生することもあります。この菌が出す毒素は熱に強いため、菌をつけないことが最も重要です。調理前や食材に触れる前には、必ず丁寧な手洗いを習慣づけましょう。
これらの細菌を防ぐには、「菌をつけない」「増やさない」「やっつける」の3つのポイントを意識した調理と保存が欠かせません。特に暑い時期は、ちょっとした油断が大きなリスクにつながるため、いつも以上の注意が求められます。
調理と保存で気をつけたいポイント

• 肉や魚は買ったらすぐ冷蔵庫へ。長時間の放置はNG
• 生肉や魚と、加熱済み食品は器具を分けて扱う
• 加熱は中心温度75℃以上・1分以上が目安
• 作り置きは粗熱を取ってから冷蔵保存。常温放置は避けましょう
• 冷蔵庫でも保存は2~3日以内が安心です
お弁当や外食でも油断は禁物

お弁当の落とし穴
朝つくったお弁当も、昼には菌が増えていることがあります。特に気温が上がる日は注意が必要です。
• 前日に準備した食材は必ず再加熱
• 殺菌作用のある梅干しや酢の活用を
• 保冷剤や保冷バッグを併用して持ち運びを
テイクアウトや外食でも
• 生ものを食べる際は、信頼できるお店を選ぶことが大切です
• 購入後はできるだけ早く持ち帰り、冷蔵庫へ入れましょう
• お惣菜やテイクアウト品も、食べる直前に再加熱することでリスクを減らせます
家庭での食中毒が意外と多い?

家庭内感染の実態
「外食が原因」と思われがちですが、実は食中毒の多くは家庭内で起きています。手洗い不足、まな板や包丁の使い回し、冷蔵保存の油断など、日常の中にリスクが潜んでいます。
• 冷蔵庫の中でも、保存期限や温度管理を定期的に確認しましょう
• 生ものを扱った後は、手指や調理器具の洗浄・消毒を忘れずに
身近な習慣が、大切な人を守る

食中毒は、時に命にも関わる深刻な健康被害につながります。しかし、手洗いや加熱、保存のひと工夫で、防げるケースがほとんどです。食事の前に手を洗う、まな板を使い分ける、加熱はしっかりと。そんな毎日の基本が、私たちの健康を支えています。
これからの季節、食材の取り扱いには特に注意しながら、安心しておいしい食卓を囲んでいきたいですね。
常温保存しがちな食材チェックリスト

意外とやりがちなのが、「これは冷蔵庫に入れなくても大丈夫」と思い込んでしまうこと。以下のような食材も、夏場は冷蔵保存がおすすめです。
• カットしたスイカやメロン
• 作り置きの煮物・おひたし
• ハムやソーセージの開封後のパック
• 漬物(特に浅漬け)
• 残ったカレーやシチュー
• 茹でたパスタやうどん(冷蔵しても2日以内に)
「いつもそうしてるから大丈夫」ではなく、「今の時期だからこそ気をつけよう」という視点が大切です。




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