厚生年金の適用拡大―それは“あなたのため”? “制度のため”?

年金・老後資金

ニュースで耳にする年金制度改革。なんとなく気になっても、「自分には関係ない」と思ってしまう人も少なくないかもしれません。
でも、その制度改革が、今のあなたの働き方や暮らしに影響してくるとしたらどうでしょうか。
厚生年金の適用拡大は、すでに2022年と2024年に段階的に実施されています。そして今、その次のステップとして“さらなる拡大”が検討されている段階に入っています。
老後の安心を広げるという建前がある一方で、本音の部分には“制度を維持するための現実”も見え隠れします。

厚生年金の適用拡大とは?

「年金格差」を埋めるという名目で

厚生年金の適用拡大は、働く人たちの「年金格差」をなくすという建前のもとで進められています。これまで対象外だった人たち――たとえば、週20時間未満のパートタイマーや小規模な事業所で働く人たちも、一定の条件を満たせば加入が求められるようになっています。背景には、「将来の年金額を増やし、老後の安心を広げる」という目的があるとされています。

本音は“保険料を払う人”を増やすこと

国の制度側にとっては、「保険料を払う人を増やす」という現実的な狙いも見えてきます。少子高齢化が進むなかで、年金制度を支える現役世代が減少する一方、年金を受け取る高齢者は増えています。このバランスを維持するには、保険料収入をいかに確保するかが大きな課題になっているのです。

拡大の先にある「変化」と「違和感」

正社員には変化なし?
企業側の負担は増加

現在すでに厚生年金に加入している正社員にとっては、適用拡大による直接的な変化はあまりありません。しかし、保険料は会社と従業員が折半して支払うため、加入者が増えれば企業側の負担も増えていきます。これにより、パートやアルバイトの雇用調整や、労働環境の見直しが進む可能性も出てきます。

パートやフリーランスは
“働き方の自由”に影響も

短時間勤務や柔軟な働き方を選んでいた人たちにとっては、厚生年金加入による保険料負担が「手取りの減少」や「働き方の選択肢の狭まり」につながることもあります。働く理由が「家計の補助」や「自分のペースで働きたい」という人にとっては、制度の変更が生活のバランスを崩す原因にもなりかねません。

ダブルワークにも広がる影響

2つの職場で働く人は要注意

2022年と2024年の改正では、複数の職場での勤務時間を合算して条件を満たすと、厚生年金への加入が必要になりました。さらに今後の議論では、すでにどちらか一方の職場で厚生年金に加入している人が、もう一方の職場でも週20時間未満であっても“加入義務あり”となる可能性が出ています。

「片方だけでOK」
から「両方で加入」へ?

つまり、「片方で入っていればOK」ではなく、「両方の職場で加入する」というルールへと変わろうとしているのです。これはダブルワークをしている人にとって、加入手続きの煩雑さや保険料負担の増加につながる懸念もあります。“自由に働く”という感覚から遠ざかる可能性も否定できません。

制度は「私たちのため」なのか

見過ごせない“制度の論理”

年金制度の改革は、「共助」の仕組みを維持するために必要だと言われています。たしかに、制度が破綻すれば困るのは私たち自身です。しかしその一方で、「誰のための改革なのか」「どこまで誰に負担がかかるのか」という点を見つめ直す必要があります。

本当に納得できるかが大事

制度に従うだけではなく、制度の意味や影響を自分ごととして受け止められるかどうか。それが問われている時代です。見えにくい“本音”に目を向けることで、制度改革の背景や狙いをより正確に理解することができます。

見直すタイミングは“いま”

「なんとなく」から
抜け出すことが防衛力に

年金制度は複雑で、つい関心を持たずに過ごしてしまいがちです。ですが、無関心でいることは「損をする側」になるリスクを高めます。自分の働き方や暮らしにどんな影響があるのかを知り、必要なら備えることが、これからの時代を生き抜く力になります。

全世代が関係する話題

年金は、これからもらう人だけの話ではありません。すでに年金を受け取っている人にとっても、制度改正によって給付水準や医療費負担が見直される可能性があります。若い世代、働き盛りの世代、リタイア世代――誰にとっても関係のある話題なのです。

自分ごととして向き合う力を

変化の波は、ある日突然大きくなるものではなく、少しずつ、気づかないうちに私たちの暮らしを変えていきます。だからこそ、「まあ関係ないか」と聞き流さず、「これって自分にとってどうなんだろう?」と問い直す視点が大切です。

自分の働き方、生き方、未来の生活を守るために、“知って、考えて、選び取る”力を持ち続けていたい。厚生年金の適用拡大も、その入口のひとつなのかもしれません。

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