シャープ?それともシャーペン? ツッカケって何のこと?
同じモノでも、呼び名が違えば、その土地の空気までふわっとよみがえります。
最近では耳にすることが少なくなった“ご当地の呼び名”には、ふるさとの記憶や暮らしの風景が息づいています。
そんな言葉の違いを通して、日本各地の生活文化や人とのつながりをめぐる言葉の旅に出かけましょう。
同じモノでも、呼び名が違う?

SNSで話題の“地域のことば”
「絆創膏」のことを「リバテープ」、「鉛筆削り」を「トガール」と呼ぶ――そんな言葉を初めて耳にして、戸惑った経験はありませんか?
今の時代、暮らしのスタイルが全国的に似てきたとはいえ、言葉の端々には土地の文化や記憶が息づいています。
呼び名の違いをたどっていくと、懐かしい暮らしの風景や家族の思い出、人と人とのつながりが浮かび上がってくることもあります。
ご当地ことばは、地域文化の“語り部”なのかもしれません。
呼び名ににじむ、暮らしの記憶

聞きなれない言葉のぬくもり
「リバテープ取ってくれる?」
最初は何のことかわかりませんでした。でも、その言葉を使った人にとっては、それが日常そのものでした。
言葉は、育った地域や家庭、世代によって異なります。たとえば、「絆創膏」は「カットバン」「サビオ」と呼ばれることもあります。
どれも同じモノを指しているのに、まるで別の言語のように感じることもありますよね。
こうした違いは、その土地に根づいた暮らしや文化、そして個人の記憶がしみ込んでいる証です。
ふとした言葉の違いが、土地の空気や暮らしの手ざわりを運んできてくれるのです。
日本各地の“ご当地ことば”いろいろ

暮らしに根づくローカルワード
• 絆創膏 → リバテープ(九州地方)
熊本の医療品メーカー「リバテープ製薬」の商品名が、そのまま絆創膏の呼び名として広まりました。学校や家庭で今も使われる身近な言葉です。
• 鉛筆削り → トガール(福岡など)
かつて文具メーカーから販売されていた「トガール」が、道具名として定着。「トガール貸して」と言えば、小学生の頃の教室が思い出されます。
• シャーペン → シャープ(関西地方)
「シャープ貸して」と言われて戸惑う人も。早川電機(現シャープ)による商品名が、地元で親しまれる呼び方に。企業の存在が言葉に影響した一例です。
• サンダル → ツッカケ(関西・九州)
「ツッカケて行く」は、ざっくりとした気軽さを表す日常語。コンビニやご近所へのお出かけに欠かせない足もとです。昭和の暮らしを思い出す人も多いのでは。
• 上履き → バレーシューズ(関西・九州)
白いゴム靴を「バレーシューズ」と呼ぶ地域も。学校文化や体操の授業、体育館の記憶と結びついた呼び名です。
呼び名の背景にある文化と歴史

商品名や暮らしの動作がルーツに
ご当地ことばの多くは、実在する商品の名前や、日常動作から生まれた言葉です。
「リバテープ」や「トガール」は、企業やメーカーの地元での定着が影響しています。
一方、「ツッカケ」のように動作を言い表した言葉には、その土地ならではのリズムや暮らしぶりがにじんでいます。
ただの呼び方に見えても、その裏には生活の歴史や地域の流通、家庭の記憶が息づいているのです。
言葉がつなぐ、人と人、土地と記憶

ふるさとがよみがえる瞬間
最近では、全国的に標準化された言葉が広まる一方で、地元ならではの呼び方は忘れられがちです。
しかし、ふとしたときに昔の呼び名が口をついて出ると、なんとも言えない懐かしさが胸に広がります。
「言葉は暮らしのかけら」
そんな感覚を、誰もが心のどこかに持っているのではないでしょうか。
呼び名には、その土地で過ごした日々の風景や、誰かとのやりとりがしっかりと刻まれています。
呼び名でめぐる、言葉の旅

「リバテープ」「ツッカケ」「シャープ」
そんな何気ない言葉のひとつひとつに、地域の文化や生活のぬくもりが宿っています。
次に誰かと話すとき、「それ、なんて呼んでた?」と聞いてみてください。
思わぬ会話が生まれて、心の中にふるさとの風景が広がるかもしれません。




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