私は“本物”じゃない気がする ― インポスター症候群と自分への信頼

メンタルヘルス

どれほど努力を重ねても、自分の力を信じきれない。まわりから褒められても、
「自分など、まだまだ」
「期待に応えられる人間ではない」
そんなふうに感じてしまう――
それは、インポスター症候群と呼ばれる心の揺らぎかもしれません。

近年、この症状に悩む方が増えてきています。
それは心の弱さではなく、真摯さや誠実さの裏返しともいえるのです。
自分を責めすぎず、自分を信じていくために。
少しだけ立ち止まって考えてみませんか。

その違和感、もしかしてインポスター症候群?

「すごいね」と言われても、
なぜか心が重たい

「すごいね」と称賛されても、うれしさよりも気まずさが先に立ってしまう。
「自分なんてまだまだです」とつい口にしてしまうのは、日本人らしい謙遜ともとれますが、その奥には、自分を認めきれない気持ちや、自信のなさがひそんでいるのかもしれません。

能力があるのに信じられない、
不思議な心の反応

インポスター症候群とは、自分の成果を「まぐれ」や「たまたま運がよかっただけ」ととらえ、「本当の自分の実力が知られてしまうのではないか」と不安を抱いてしまう状態です。
とくに、真面目で努力家な方、周囲の期待が大きい立場にある方、新しい環境に身を置いたばかりの方などに多く見られると言われています。

近年、悩む人が増えている理由とは?

成果と評価に重きを置く空気の中で

「目に見える成果」や「数字としての評価」が重んじられる社会のなかで、多くの方が心のどこかで、
「自分はまだ何も成し遂げていない」
「自分にはここにいるだけの価値があるのだろうか」
という思いを抱えがちです。

努力しても「足りない」
と感じてしまう思考のくせ

この症状に悩む方ほど、自らの努力を当然のことと考え、それを誇りに思うことができません。
他人の優れた面ばかりが目につき、自分の足りない部分しか見えなくなる。
その視点の偏りこそが、心の疲れを生み出していくのです。

比較に疲れた心をいたわるために

他人と比べることで、
自分が見えなくなる

「あの人のようにもっとがんばらなくては」――
そう思えば思うほど、自分自身の歩みが見えづらくなってしまいます。
しかし、人と比べることでは測れない価値が、すでにあなたのなかにあるということも、忘れないでください。

内なる声に耳を澄ます時間を

今は、あらゆるものが情報や評価にさらされる時代です。だからこそ、自分の声に静かに耳を澄まし、ひととき立ち止まる時間が、これまで以上に大切になっています。

“本物”でなくていいという生き方

評価されていない自分にも価値がある

大切なのは、
「評価される=正しい」
「評価されない=誤り」
という考えから、少し離れてみることです。

他人からの称賛だけが、自分の価値を決めるわけではありません。
日々をていねいに生きること、
人を思いやること、
一歩を踏み出すこと――
そのすべてに、意味があります。

未完成な自分を、自分が認めてあげる

「まだ本物ではない」という感覚は、向上心の証しでもあります。
不器用でも、迷いながらでも、一歩を進めている自分を認めること。
それが、自分を信じる力の土台になります。

不安や揺らぎは、前に進もうとしている心の証です。

自分を信じる練習を、日々のなかで

小さな出来事を「できた」と受けとめる

自分を信じることは、特別なことではありません。
ふだんの暮らしの中で、次のようなことを意識するだけでも変わっていきます。

  • • 今日の仕事をやり遂げた
    • 誰かにやさしい言葉をかけられた
    • 忙しい中でも深呼吸ができた

それらを、自分で「できた」と認めることから始めてみてください。

“本物かどうか”ではなく、
“ここにいる自分”を信じる

他人が決めた評価ではなく、自分自身がどうあるかが大切です。
「自分はまだ足りない」「もっとがんばらなければ」と感じるときも、それは信頼を築く途上にある姿なのです。

歩みを止めず、今の自分を大切にするとき、それはやがて、あなた自身の「信じる力」となって現れていきます。

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