「終活は高齢者のためのもの」あるいは“死の準備”というイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし、近年では20代・30代の若い世代においても、「終活」「生前契約」「身元保証」といった言葉に関心が集まっています。

災害への備えや孤独への不安、デジタル社会の変化、そして“自分の生き方を自分で選びたい”という強い意志──若者たちが終活に向き合う理由には、こうした背景が見えてきます。

終わり方を考えることは、生き方を見つめること

「死を語るのは重たいこと」──
そんな思い込みを超えて

「死を語るのは重たいこと」──そうした考え方に縛られず、自分の人生の終わり方は、自分で決めたいという思いが、若者のあいだでも広まりつつあります。
この姿勢は、「終活」が単なる死の準備ではなく、自分自身の生き方や価値観を見つめ直す行為であることを意味しています。

自立心と責任感のあらわれとしての終活

ある調査によれば、20代の多くが「誰にも迷惑をかけたくない」そして「自分の意志で最期を選びたい」と考えているそうです。
こうした傾向は、若い世代ならではの自立心や責任感のあらわれであり、「自分の人生を自分で設計する」という意思が感じられます。

「もしも」は思ったより、近くにある

災害・感染症・事故が
教えてくれたこと

東日本大震災や感染症の流行、突然の事故や病気──
私たちは予期せぬ別れや不安を何度も経験してきました。
「まだ若いから大丈夫」ではなく、「若いからこそ準備をしておきたい」と考える人が増えているのです。
終活とは、「死の準備」ではなく、「残された人への思いやり」であり、「自分らしさを守る方法」でもあるのです。

デジタル社会の終活──SNSとスマートフォンも遺品に

SNSへの投稿、スマートフォンに保存された写真、クラウド上のデータ──それらは、すべて“もう一つの遺品”として扱われるものです。

自分がいなくなったあとに何を見られたいのか、何を見られたくないのか──。
パスワードの整理や不要データの削除は、終活の大切な一環です。

とくに近年の若い世代にとって、デジタル遺品の整理は避けて通れない課題となっています。

家族がいなくても困らない備え──身元保証と生前契約

「もしも」に備える

ひとり暮らし、未婚、非正規雇用──。
社会的なつながりが限定されがちな若者世代にとって、身元保証人がいないと病院に入れない、家を借りることが難しい、といったことが、若者にとっても現実的な不安となっています。

身元保証サービスや生前契約、エンディングノートなどを活用することで、自分の暮らしを守り、将来の不安に備えることができます。
たとえ家族に頼れない状況であっても、一人で安心して暮らしていくための手段は存在します。

若者こそ、エンディングノートを

エンディングノートと聞くと、高齢者のためのものという印象を持たれるかもしれません。
しかし実際には、若い世代にとっても多くの場面で役立ちます。

将来の医療や介護に関する希望、望む葬儀の内容、財産や連絡先の整理──それだけでなく、ライフイベントへの備えとしても活用できます。
就職や転職、引越しなど、生活の変化が多い時期こそ、自分の意思を整理するための手段として有効なのです。

将来に備えるというよりも、「今をよりよく生きるため」に、エンディングノートを使ってみてはいかがでしょうか。

ペットや友人への思いやりも、終活の一部

大切なペットを誰に託すか、心を寄せる友人へのメッセージをどう遺すか──
こうしたことも立派な終活の一つです。

「何を、誰に、どう遺すか」を考える行為は、大切な人への思いやりであり、自分の生き方の表現でもあります。

終活とは、「よりよく生きる」ための道しるべ

終活という言葉に重々しい印象を抱く必要はありません。
むしろ、自分の価値観や希望を確認し、これからを自分らしく生きるための準備です。

人生の終わり方を選ぶことは、生き方そのものを選ぶこと。
終活は、“誰かのため”でもあり、“自分自身への優しさ”でもあるのです。