眠っていないのに、脳が休まる…そんな不思議な状態があると聞いたら、あなたは信じるでしょうか。近年、科学者や企業経営者の間で注目されている「NSDR(Non-Sleep Deep Rest)」は、深い睡眠に近いレベルで心と身体を回復させる新しい休息法です。
「睡眠不足を補いたい」「集中力が続かない」「日中に気持ちをリセットしたい」そんな声に応えるNSDR。そのしくみとやり方、得られる効果について順を追って見ていきましょう。
NSDRとは何か?

「眠らずに休む」不思議なリセット法
NSDR(Non-Sleep Deep Rest)は、文字通り「眠らない深い休息」を意味します。意識はあるまま、脳と神経系を“半休止”のような状態に導く方法です。仮眠や昼寝とは異なり、眠りに落ちないため、短時間でも高い回復効果が期待でき、時間帯を問わず実践することができます。
提唱者は神経科学者
アンドリュー・フーバーマン
この概念を広めたのは、スタンフォード大学の神経科学者アンドリュー・フーバーマン教授です。脳の可塑性(かそせい:脳が変化・再構築する力)を活かす方法として紹介され、世界中の学生、ビジネスパーソン、スポーツ選手らに広がっています。
NSDRの効果とは?

脳の回復と集中力の向上
NSDR中は、脳波がα波からθ波へと移行し、深いリラクゼーション状態に入ります。この状態では脳が情報を整理し、短期記憶を長期記憶へ移す作業がスムーズに行われていきます。
勉強や仕事の前後に取り入れることで、集中力やアイデアの質が高まるといわれています。
自律神経を整えてストレスを軽減
NSDRは副交感神経を優位にし、呼吸や心拍、血圧を穏やかに整えます。不安やストレスがやわらぎ、眠りの質が高まる人も。まるで「心の休息スイッチ」のような役割を果たします。
NSDRのやり方

ヨガニードラを取り入れる
NSDRの代表的な実践方法に「ヨガニードラ(Yoga Nidra)」があります。「眠りのヨガ」とも呼ばれ、横になりながら行うガイド付きの瞑想法です。
YouTubeなどで「ヨガニードラ 日本語」と検索すると、多くの無料音声ガイドが見つかります。
手順の一例(約10〜20分)
1. 静かで落ち着ける場所に横になる(椅子に座ったままでも可)
2. 目を閉じ、呼吸に意識を向ける
3. 音声ガイドに従い、身体の各部位に意識を巡らせる(ボディスキャン)
4. 頭に浮かぶイメージや感覚を受け止め、ただ流していく
5. 終了時はゆっくりと意識を戻す
ガイド音声なしでも実践可能
慣れてきたら、音声ガイドなしでもできるようになります。
「5〜10分間、呼吸に集中しながら身体の感覚に意識を向ける」といった方法でも、脳は回復のモードに入ることができます。
どのような人におすすめか?

• 睡眠時間が不足しがちな人
• 長時間のパソコン作業や情報過多で疲労感が抜けにくい人
• 勉強や創作活動の前後に集中力を高めたい人
• 気持ちの切り替えが難しく、落ち込みやすいと感じている人
わずか10分の静かな時間で、脳と神経が整い、思考がクリアになる感覚を実感する人も多くいます。
「深く休む」は、新しい回復と再起動のかたち

「しっかり眠ることが大切」とわかっていても、忙しさやストレスで十分な睡眠を取れない日もあります。
そんなとき、NSDRは「眠らずに休む」という新しい選択肢として、心身を支えてくれます。これは単なるリラクゼーションではなく、脳の再起動・安定・活性化を同時に促す、科学的にも注目される方法です。
近年では、瞑想やマインドフルネスと並んで関心が高まり、さまざまな場面で取り入れられるようになったNSDR。数分間の静けさが、あなたの思考、感情、日常の質を変えてくれるかもしれません。




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