同性婚が認められていない日本では、人生を共にするパートナーがいても「法律上の家族」として認められない現実があります。そのなか、自身の意思を法的に明確に示す「生前契約」は、LGBTQ+の方々が安心して人生を歩むために欠かせない準備のひとつです。医療や介護、死後の手続きなど、さまざまな場面で「家族ではない」という理由で排除されないために、生前契約は大きな力を発揮します。
同性パートナーが直面する法制度の壁

法的に認められていない
パートナーシップ
日本では、同性同士の結婚が制度として認められておらず、たとえ長年一緒に暮らしていても法律上は「他人」として扱われます。自治体によるパートナーシップ制度もありますが、法的拘束力はほとんどなく、医療や相続などの重要な場面で限界があります。
家族としての法的な
権利がないという現実
医療の同意、葬儀の決定、財産の管理など、本来は家族が担う役割を同性パートナーが担うためには、あらかじめ法的な準備が必要です。準備をしていないと、本人の意思が尊重されず、血縁関係のある家族だけがすべての決定権を持ってしまう可能性があります。
生前契約の必要性が高まっている理由

自分の意思を明確にするために
生前契約は、「誰に何をしてほしいか」「どのような介護や医療を望むか」など、自分の希望を法律上の文書として残す方法です。意思表示をしておくことで、判断能力が失われた後でも、本人の希望が尊重されやすくなります。
医療や死後の判断を
パートナーに託すために
入院時の対応や、亡くなったあとの葬儀や遺品整理など、パートナーが関与したくても法律で制限される場面は少なくありません。このような問題を避けるためにも、事前の契約が重要になります。
LGBTQ+の方が利用できる主な契約の種類

任意後見契約で将来の判断を委ねる
自分の判断能力が低下したときに備えて、信頼できる人に財産管理や医療の判断を任せる契約です。同性パートナーを後見人に指定することで、他人の介入を避けることができます。
死後事務委任契約で
葬儀や遺品整理を託す
亡くなった後の手続きを、家族以外の人にお願いできる契約です。パートナーに遺体の引き取りや葬儀の手配を任せたいと考える場合、この契約はとても有効です。
公正証書遺言で確実に財産を託す
遺言書を公正証書で残すことで、法的な効力が高まり、相続トラブルのリスクを減らすことができます。同性パートナーは法定相続人ではないため、遺言がないと財産を受け取ることはできません。
よくあるトラブルとその防止策

病室に入れない、医療判断できない
家族以外の人は病室への立ち入りが制限されたり、医師からの説明を受けられなかったりすることがあります。しかし、事前に任意後見契約や代理権契約を結んでおけば、パートナーでも医療の場面で正当な権限を持つことができます。
遺産を受け取れない
同性パートナーには相続権がないため、遺言がない場合、財産はすべて血縁者に渡ってしまいます。これを避けるには、公正証書遺言の作成が不可欠です。
契約を結ぶときに気をつけたいこと

必ず公正証書で残す
任意後見契約や死後事務委任契約は、公証役場で作成された「公正証書」にしておく必要があります。口頭での約束や自筆のメモでは、法的効力がないか、争いのもとになることもあります。
専門家に相談して進めるのが安心
司法書士や弁護士、信頼できる生前対策の専門家に相談することで、抜け漏れのない契約内容に整えられます。とくに、複数の契約を組み合わせる場合は、法律上の整合性が重要です。
自分らしい人生のためにできる準備

性のあり方に関係なく、自分の人生を自分で選び、最後まで尊重されることは、誰にとっても大切なことです。法的に不利な立場にあるLGBTQ+の方々だからこそ、生前契約によって自分の意思を確実に残しておくことが重要です。
人生の最後の場面で、望まない判断をされないために。誰かに委ねるのではなく、自分の想いを守る手段として、生前契約はとても有効です。




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