認知症になると契約は無効?サインしても効力がない理由と対策

成年後見制度・財産管理

親が認知症と診断されたあと、「契約しても無効になることがある」と聞いて不安になる方は多いかもしれません。実際、遺言書や不動産の売買、介護サービスの利用など、暮らしに関わる契約は、本人に「判断する力」があるかどうかが大きく影響します。後々トラブルにならないように、契約と認知症の関係を正しく理解して、早めの備えをしておくことが大切です。

暮らしの中には多くの「契約」がある

日常の中にある意識しない契約

不動産の売買や賃貸、遺言書の作成、介護サービスの契約など、暮らしにはさまざまな契約行為があります。これらの契約はすべて、「本人に判断能力があること」が前提です。

判断力がないと契約は成立しない

認知症が進行すると、契約内容を理解したり判断したりする力が少しずつ低下していきます。そのため、契約書に本人が自らサインしていたとしても、「そのときに理解力がなかった」と判断されれば、契約が無効になることがあります。

契約が有効になるための条件とは

判断力が問われるのは「契約時点」

契約の有効性は、「契約した時点で本人に意思能力があったかどうか」によって決まります。意思能力とは、契約内容を正しく理解し、自分にどんな影響があるかを判断できる力のことです。たとえ後から認知症と診断されても、契約時にしっかりと理解していれば有効と判断される場合もあります。

家族の同席だけでは補えない

家族がそばにいて説明を補ったとしても、本人が契約内容をしっかりと理解していなければ、法的には契約が成立しないこともあります。「サインしていたのに、あとから無効になった」というケースは、この判断能力の確認が不十分だったことが原因であることが多いのです。

判断力の低下はいつから?見極めの難しさ

診断直後でも判断力が残っていることも

認知症と診断されたからといって、すぐにすべての契約が無効になるわけではありません。初期段階であれば、本人が契約内容を理解し、自ら意思を示すことができる場合も多くあります。

判断力が揺らぐ「グレーゾーン」

日によって体調や認知機能にばらつきが出ることがあるため、判断力の有無を一律に判断するのは難しいのです。このような曖昧な状態を「グレーゾーン」と呼ぶことがあり、あとからその時点で意思能力があったかどうかが問題になるケースも少なくありません。

契約を無効にしないためにできる準備

元気なうちに備えておくことが大切

もっとも大切なのは、判断能力がしっかりしているうちに、必要な契約を済ませておくことです。たとえば遺言書の作成や資産管理の手続きなどは、できるだけ早めに行っておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。

任意後見契約で将来に備える

任意後見契約を利用すれば、信頼できる人に将来の財産管理を託すことができます。この契約は、公正証書として作成し、家庭裁判所の監督がつくため、本人や家族にとって安心感があります。

成年後見制度との違いを理解しておく

任意後見と法定後見の違い

成年後見制度には大きく分けて2つあります。

• 任意後見制度:本人の判断能力があるうちに、将来に備えて契約しておく仕組み
• 法定後見制度:すでに判断能力が大きく低下している場合に、家族や第三者が申し立てる仕組み

どちらも本人を守る制度ですが、任意後見制度は本人の意思を反映しやすく、柔軟な設計が可能です。

認知症が進むと任意後見契約はできない

認知症が進行して本人の判断力が低下してしまうと、任意後見契約を結ぶことができなくなります。その場合は、家庭裁判所に申し立てを行い「法定後見制度」を利用することになります。

家族が知っておきたい「契約のタイミング」

「まだ早い」は手遅れのもと

親が元気そうに見えても、「早めに備えておこう」という姿勢が非常に重要です。いざ契約が必要になったときに、判断能力がなく契約ができなかったというケースは少なくありません。特に、不動産の売却や相続に関する手続き、介護サービスの契約などは、判断能力が必要になる場面が多いため、早めの行動がカギになります。

家族で話し合いを重ねておく

「まだ早いかも」と思わず、小さな話し合いから始めましょう。本人の意思を尊重しながら将来を一緒に考えることで、家族全体が安心して備えることができます。

契約と認知症の関係は「備え」で変えられる

契約は、ただ書類にサインすればよいものではありません。大切なのは、「本人が本当に内容を理解していたか」という点です。
認知症が進行してその力が揺らぎ始める前に、本人も家族も必要な準備をしておくこと。その積み重ねが、本人の権利を守り、家族の不安や負担を減らすことにつながります。

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