「自分ならきっと乗り越えられる」と思えるかどうかは、日々の心の安定や、生き方そのものに関わります。困難にぶつかったとき、立ち止まりながらも前に進んでいける人には、共通して「自己効力感」が育っているのです。誰にでも育てられるこの力が、レジリエンスの土台となり、しなやかに生き抜く支えになるのです。
自己効力感とは何か

「できる自信」はどこから生まれる?
自己効力感(Self-Efficacy)は、自分の行動によって目標を達成できるという感覚のことです。単なる希望や気休めではなく、過去の成功体験や学びを土台にした、根拠ある自信です。スタンフォード大学のアルバート・バンデューラ博士が提唱したこの概念は、教育、ビジネス、医療など幅広い分野で応用されています。
自己肯定感とのちがい
自己肯定感は「自分という存在そのものに価値がある」と思える感覚で、自己効力感とは別の心の働きです。何かができるかどうかではなく、「できなくても大丈夫」と思える土台のようなもの。両方が揃うことで、心のしなやかさが育ちやすくなります。
レジリエンスと自己効力感の関係

折れない心はどう育つのか
レジリエンスとは、ストレスやトラブルがあっても立ち直り、前向きに歩み直せる力のことです。その土台にあるのが、「困難でも自分なら乗り越えられる」という自己効力感。これがあると、試練そのものを「チャンス」と捉える柔軟性が生まれてきます。
自己効力感が高い人の行動パターン
自己効力感が高い人は、失敗しても「これも経験」と受け止め、粘り強く挑戦を続けます。また、行動を先延ばしにせず、自分の判断で動こうとする傾向があります。こうした姿勢は、変化の多い時代にも柔軟に対応しやすく、周囲からの信頼にもつながっていくはずです。
自己効力感を育てるには

小さな「できた」を積み重ねる
自己効力感は、特別な才能や大きな成功がなければ育たないというものではありません。むしろ、日々の中で「思ったよりできた」「昨日より少し進んだ」と感じるような小さな成功体験の積み重ねが、自信の芽を育てます。洗濯を済ませた、散歩に出られたなど、ささやかな達成で十分です。
環境と周囲の言葉も影響する
応援してくれる人の存在や、挑戦を後押しする環境は、自己効力感の土台になります。誰かの「あなたなら大丈夫」という言葉が、自分を信じるきっかけになることもあります。逆に、否定的な言葉ばかり浴びていると、自分の可能性を信じにくくなってしまうので、環境を見直すことも大切です。
子どもから大人まで、一生育てられる力

教育の現場で注目されている理由
最近の教育では、テストの点数よりも「頑張ったプロセス」や「工夫した行動」に目を向ける声かけが重視されています。これは、子どもが「やればできる」という感覚を持つ土台になります。そしてその感覚は、将来のチャレンジ精神にも直結します。
大人こそ実感を重ねやすい
大人になると、社会的な評価や失敗への不安から「もう遅い」と感じがちです。しかし、経験を積んできた大人だからこそ、過去の失敗や成功を活かして「今からできること」に目を向けやすいはずです。年齢を重ねても自己効力感はじゅうぶん育てられます。
自己効力感がもたらす心の変化

ネガティブ思考に引きずられにくくなる
自己効力感がある人は、困難な状況でも「自分なら何とかできる」と思えるため、過度な不安や自己否定に陥りにくくなります。これはメンタルヘルスにも大きな影響を与え、うつ症状や燃え尽きへの予防にもつながります。
主体的に生きる力を支える
自分の行動が未来に影響を与えると信じられる人は、何かを「やらされる」のではなく、「自分で選ぶ」ことができます。小さな選択でも、自分で決めたという感覚があると、日常が前向きに感じられ、人生に対する納得感や充実感も高まりやすくなります。
折れない心は毎日のなかで育つ

「できるかどうか」より
「やってみること」が大事
自己効力感は、生まれつきの性格ではなく、日々の暮らしの中で育てられるものです。大きな挑戦をしなくても、「昨日の自分を少し超える」ような意識があれば、確かな自信になっていきます。完璧である必要はありません。
自分の可能性を信じる力を、少しずつ
どんなに自信があるように見える人でも、つまずくことはあります。大切なのは、落ち込んだあとにどう立ち上がるか。自分を信じる感覚は、ひとつひとつの積み重ねで少しずつ形になります。今日も、自分の中にある「できる力」に目を向けてみてください。




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